十人十色の旅行
「ひゃあ、45度あるぞお!」とRさんが叫ぶ。
北海道 旅行にまでトランシーバーやら巨大な水筒やらハンゴウやら何やら、用意周到用心抜群の彼は、何と、勾配を測る道具まで御持参なのであった。
階段は途中2ヶ所ほど、無残に破壊されていた。
プラスチックの板でつくった粗末なものだったから、自然にこわれたのだろう、とはじめ思ったのだが、「あれっ!ひょっとしてこの石、日本海中部地震で崩れてころがってきたんじゃないかしら?」というTさんの声に、ハッと気がついたのである。
あたりには、なるほど、人の身体から牛の胴体ぐらいまでの大きな岩塊が、あちこちにころがっていた。
これも45度はありそうな清部岳の南斜面を落下してきたにちがいない!
そしてそのいくつかが階段にぶつかったのにちがいない-あとで船長さんにきいたら、岩はやはり日本海地震の時に落ちてきたのだった。
さすが有珠山の爆発を身近に体験したTさん。
勘がするどい!
光に満ちながら澄みわたった空から降りそそぐ日の光は汗ばむほどにあたたかく、ついさっきまでの風の寒さがウソのようだった。
灯台まで一気に100メートルの登りで、早くも息が切れる。
しかし、弾む胸に吸いこまれる空気の美味しさは、渇き切ったのどをうるおす清洌な湧き水のようだった。